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特定健康診査等実施計画

1. 計画策定にあたって
2. 保険者の特徴
3. 特定健康診査・特定保健指導の実施状況
4. 医療費データの分析
5. 健康課題のまとめ
6. 6. 目的・目標の設定
7. 保健事業実施計画(デ―タヘルス計画)の評価方法の設定
8. 保健事業実施計画(デ―タヘルス計画)の評価方法の見直し
9. 計画の公表・周知
10. 個人情報の保護
11. その他の計画策定に当たっての留意事項

茨城県医師国保組合保健事業実施計画書

平成30年~平成35年

1. 茨城県医師国保組合の現状

(1)背景・目的

 我が国では、生活水準や保険・医療の進歩等により、平均寿命が伸びています。しかしながら、急速に高齢化が進む中、生活習慣病等が増加しており、医療費や介護給付費等の社会保障費の増大が懸念されています。

 近年、特定健康診査の実施や診療報酬明細書等(以下「レセプト等」という。)の電子化の進展、国保データベースシステム(以下「KDBシステム」という。)等の整備により、保険者が健康や医療に関する情報を活用して被保険者の健康課題の分析、保健事業の評価等を行うための基盤の整備が進んでいます。

  こうした中、「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)においても、「全ての健康保険組合に対し、レセプト等のデータ分析、それに基づく加入者の健康保持増進のための事業計画として「データヘルス計画」の作成・公表、事業実施、評価等の取り組みを求めるとともに、市町村国保が同様の取り組みを行うことを推進する。」とし、保険者はレセプト等を活用した事業を推進するとされています。

  これまでも、保険者においては、レセプト等や統計資料等を活用することにより、「特定健康診査等実施計画」の策定や見直し、その他の保健事業を実施してきたところでありますが、今後は、さらなる被保険者の健康保持増進に努めるため、保有しているデータを活用しながら、被保険者をリスク別に分けてターゲットを絞った保健事業の展開や、ポピュレーションアプローチから重症化予防まで網羅的に保健事業を進めていくことなどが求められています。

 茨城県国民健康保険組合においては、保健事業実施指針に基づき、データヘルス計画を定め、生活習慣病対策をはじめとする加入者の健康増進、重症化予防等のPDCAサイクルに沿った効果的な保健事業の実施および評価を行うものとします。

(2)計画策定の位置づけ

 データヘルス計画とは、健康・医療情報を活用してPDCAサイクルに沿った効果的かつ効率的な保健事業の実施を図るための保健事業の実施計画です。計画の策定にあたっては、特定健康診査の結果、レセプト等のデータを活用し、現状分析、健康課題の把握、目標の設定を行います。

 なお、データヘルス計画は、保健事業の中核をなす特定健診及び保健指導の具体的な実施方法を定めるものであることから、「特定健康診査等実施計画」と一体的に策定します。(表1)

表1 計画策定の位置づけ
計画の種類 「特定健康診査等実施計画」 「データヘルス計画」
計画の名称 第3期特定健康診査等実施計画 保健事業実施計画
法律 高齢者の医療の確保に関する法律
第19条
国民健康保険法第82条
実施主体 医療保険者(義務) 医療保険者
計画期間 平成30年度~平成35年度 平成30年度~平成35年度
目的 ・被保険者の健康寿命の延伸
・メタボリックシンドロームに着目し、生活習慣病の発症予防と重症化の抑制
・医療費適正化
・健康の保持に努める必要がある者に対しての特定保健指導の実施
・被保険者の健康寿命の延伸
・メタボリックシンドロームに着目し、生活習慣病の発症予防と重症化の抑制
・医療費適正化
・健康の保持に努める必要がある者に対しての特定保健指導の実施
対象者 40歳から74歳の被保険者 被保険者全員
対象疾病 メタボリックシンドローム
・肥満
・糖尿病
・高血圧
・脂質異常症
虚血性心疾患
脳血管疾患
糖尿病性腎症
慢性閉塞性肺疾患(COPD)

(3)計画期間

平成30年度から平成35年度までの6年間

2.保険者の特徴

(1)当国保組合の特徴

 当国保組合は、茨城県に住所又は診療所を有する茨城県医師会の会員及びその医療機関で医業に従事する従業員とその家族が加入している職域の国民健康保険組合です。

 世帯数(74歳以下の組合員数)は、平成29年3月末時点で、3,074世帯です。被保険者数は4,968人、そのうち男性が1,506人、女性が3,462人と全体の約70%を女性が占めているのが特徴です。また、被保険者の平均年齢は41.1歳となっています。

被保険者の種別
・第1種組合員
  75歳未満で、茨城県に住所又は診療所を有する茨城県医師会の会員である医師。

・准組合員
  組合員が開設又は管理する診療所に勤務する従業員。
  (医師・看護師・事務等)

・家族
組合員と同居している家族で他の医療保険に加入していないもの。

(2)被保険者の概況

 当国保組合の平均被保険者数の推移を組合員別にみると、第1種組合員は、平成24年度の956人から減少傾向にあります。准組合員は年々増加傾向にあったがこちらも減少傾向となり、組合員家族も減少傾向にあります。平成28年度時点で、組合員の平均被保険者数は873人、准組合員の平均被保険者数は2,218人、組合員家族の平均被保険者数1,907人と5年間で423人も減少しております。(図1)

  また、被保険者の年齢構成では、40~64歳の被保険者数の構成比率が48.3%と最も高く、次いで39歳以下の42.5%、65~74歳の9.2%となっています。

  65歳未満の被保険者数が約90.5%と、県・国と比較すると若い世代の構成比率が高い傾向となっており、反対に65~74歳の高齢層が占める割合は県・国と比較して構成比率が低い傾向となっています。(図2)

図1 年度別平均被保険者数の推移

図2 被保険者の年齢構成(平成28年度)

(3)医療費の状況

 当国保組合の一人あたりの月額医療費は10,852円で、県22,467円、国24,253円と比べても2分の1以下と少ない状況にあります。(表2)

 外来と入院の割合を比較すると、外来件数は98.6%を占めており、入院件数は1.4%と少ないが、費用額でみると入院が全体の26.3%を占めています。(図3)

表2 一人あたりの医療費(平成28年度)
一人あたり医療費 医師国保
10,852円 22,467円 24,245円
資料:KDBシステム「健診・医療・介護データからみる地域の健康課題」

図3 外来と入院の件数及び費用額の割合(平成28年度)

3.特定健康診査・特定保健指導の実施状況

 平成18年6月に「医療制度改革関連法」が成立し、平成20年4月には、「高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)」に基づき、保険者に対して、40歳以上75歳未満の被保険者を対象とする特定健診・特定保健指導を一期5年の計画を立て実施することが義務付づけられました。

  平成30年度より計画・実施される第3期特定健康診査等実施計画では、第1期・第2期特定健康診査等実施計画の実績を踏まえ、計画期間を一期6年とし、計画を立て実施することが義務づけられています。

(1)特定健康診査・保健指導の実施状況

 当国保組合の特定健康診査受診対象者である40歳以上の被保険者は、平成28年度で2,858人となっています。

 当国保組合では、『第1期特定健康診査等実施計画』における受診率の目標値を、平成24年度までに受診率70%達成と設定しましたが未達成であり、続く『第2期特定健康診査等実施計画』においても、国の参酌基準を基に目標値を70%に設定しました。

  しかし、平成28年度時点で対象者数2,858人に対して受診者数は1,081人。受診率が37.8%と毎年2%程度の伸びで受診率を維持しているものの、『第2期特定健康診査等実施計画』における受診率の目標値70%達成には到底至っていません。(表3)

  また、特定保健指導については、平成28年度の対象者数112人(動機付け支援76人、積極的支援36人)のうち、終了者数3人となっています。毎年数名の受診数であることから、国の参与基準である目標値30%達成には更なる努力が必要な状況であります。(表4)県・国に比べると生活習慣の改善意欲は高いものの、特定保健指導の希望・利用にはつながらないのが現状です。(表5)

表3 特定健診実施状況(法定報告基準)の推移(平成24年度-平成28年度)
  対象者数 受診者数 前年度比 受診率 目標値
平成24年度 2,779人 935人 - 33.6% 70%
平成25年度 2,776人 955人 102.1% 34.4% 70%
平成26年度 2,812人 982人 102.8% 34.9% 70%
平成27年度 2,799人 1,002人 102.0% 35.8% 70%
平成28年度 2,858人 1,081人 107.9% 37.8% 70%
表4 特定保健指導実施状況(法定報告基準)の推移(平成24年度-平成28年度)
  対象者数 受診者数 前年度比 受診率 目標値
平成24年度 109人 2人 - 1.8% 30%
平成25年度 115人 3人 150.0% 2.6% 30%
平成26年度 120人 5人 166.7% 4.2% 30%
平成27年度 109人 5人 100.0% 4.6% 30%
平成28年度 112人 3人 60.0% 2.7% 30%
※表3・表4の目標値については、第1期・第2期特定健康診査等実施計画における目標値を掲載
表5 生活改善の意欲(平成28年度)
質問票の項目 医師国保
生活習慣
改善
改善意欲なし 17.2% 25.5% 30.7%
改善意欲あり 36.5% 30.4% 27.3%
保健指導 保健指導を利用しない 78.7% 60.8% 59.3%
参考:KDBシステム「地域の全体像の把握(平成28年度累計)」質問票より

 性別・年齢階層別に健診受診率の推移をみると、平成24年度から平成27年度にかけて受診率が上昇傾向にあった年代層も少なくありませんが、平成28年度に減少してしまった年代層もあります。

 平成28年度の受診率において、60~64歳の男性33.1%となっていますが、医師男性60代前半は、健康にたいする自覚がありますが、多忙であり受診できずにいる状況が考えられ、生活習慣病の早期発見や重症化予防をするためには、年1回の特定健康診査を受け、身体状況をチェックすることの意義を個別に通知する等の対策が必要です。

 また、70~74歳の男性、65~69歳の女性は5年間で減少傾向を示しています。男性の70~74歳、女性の65~69歳は、医療機関で何らかの治療や内服が始まり、「特定健診は必要ない」と感じている可能性があります。しかしながら、治療中の方でも特定健診の対象となりますので、定期健診に特定健診の項目を含ませることを周知する必要があります。(図4)

図4 性別・年齢階層別特定健診受診率の推移(平成24年度-平成28年度)

(2)健診結果の分析

 全ての項目において、県・国と比較して、概ね低い結果となっていますが、メタボリックシンドローム該当・予備群レベルの中で、男性の腹囲の判定基準値以上の者の割合が50.2%高いことがわかります。(表6)

  また、メタボリック該当者、予備群における所有見者の中で、血圧5.7%、血糖・血圧1.6%、血圧・脂質4.7%、血糖・血圧・脂質2.3%であり、計9.2%の該当者がいるため、血圧対策等も検討する必要があります。

表6 健診受診者に占める非肥満高血糖・メタボ該当・予備群レベル(平成28年度)

 メタボリックシンドローム該当者、及び予備群の判定のステップについては、以下の通りです。

保健指導対象者の選定と階層化(その1)

 

 表7の質問票調査による生活習慣の状況をみると、県・国に比べ、喫煙者やお酒を毎日飲んでいる者の割合は少ないです。しかし、改善の余地がある運動習慣・食習慣の割合が高く、また、睡眠不足で充分な休養が取れていない者の割合が高いことがわかります。(表7)

表7 質問票調査による生活習慣の状況(平成28年度)
質問票の項目 医師国保
喫煙 習慣的にたばこを吸っている 5.6% 13.1% 14.2%
運動習慣 1回30分以上の運動習慣なし 72.5% 56.6% 58.8%
1日1時間以上運動なし 72.1% 55.0% 47.0%
食 事 食べ方 食べる速度が速い 33.1% 25.5% 26.0%
食べる速度が普通 60.4% 66.3% 65.6%
食べる速度が遅い 6.5% 8.2% 8.4%
食習慣 週3回以上就寝前に夕食を摂る 16.9% 16.5% 15.5%
週3回以上夕食後に間食を摂る 17.9% 9.8% 11.9%
週3回以上朝食を抜く 9.5% 7.1% 8.7%
飲 酒 習慣 お酒を毎日飲む 14.0% 24.0% 25.6%
お酒を時々飲む 21.7% 19.2% 22.1%
お酒をほとんど飲まない 64.4% 56.8% 52.3%
1回の量 1合未満 79.5% 59.3% 64.0%
1~2合 15.3% 26.1% 23.9%
2~3合 4.0% 11.9% 9.3%
3合以上 1.1% 2.6% 2.7%
休養 睡眠不足 40.4% 25.4% 25.1%
参考:KDBシステム「地域の全体像の把握(平成28年度累計)」質問票より

(3)特定健診未受診者の把握(平成28年度)

 平成28年度の特定健診における未受診者で治療をしていない方は、特定健診対象者のうち40~60歳は782人(34.7%)、65~74歳は137人(30.4%)です。

  これらの該当になった方が、生活習慣を振り返り、病気の早期発見や早期治療につなげるためにも、健診を受けることが重要となります。(図5)

※下記図5のデータは、茨城県国保連合会のKDB2次加工ツールにて抽出しており、法定報告のデータとは多少の値の違いがあります。

図5 特定健診未受診者の把握(平成28年度)

(4)特定健診の受診有無による生活習慣病治療費比較(平成28年度の1人当たりの月額)

 平成28年度における特定健診を受診した方と受診しなかった方の生活習慣における1人あたりの月額平均の治療費は、健診を受診した方は8,593円、健診を受けなかった方は31,978円とその差は23,385円となっています。(図6)

図6 費用対効果:特定健診の有無と生活習慣病治療にかかっているお金(平成28年度)

(5)その他の保健事業の実施状況について

 当国保組合では健診費用を負担する他、インフルエンザワクチンの予防接種に対し、上限2,000円までの補助金を出す等の事業を実施しています。(図7)

図7 インフルエンザ予防接種人数の内訳・推移

4. 医療費データの分析

図8 全医療費に占める疾患別割合(平成28年度)

 図8は当国保組合の平成28年度における医療費データです。がんが36.4%と割合が最も高いですが、高血圧症、糖尿病等の生活習慣病から人工透析につながる傷病の医療費は17.7%とがん、筋・骨格に続いて高くなっています。

 一度、人工透析になってしまうと高額の医療費がかかるため、未然にこれを防ぐことや、使用薬剤の後発医薬品への切替等が医療費削減につながると考えます。

表8 人工透析レセプト分析(平成29年3月)
年齢 人工透析 糖尿病 高血圧
人数 人数 人数
40歳代 1 0 1
50歳代 3 0 3
合計 4 0 4

資料:KDBシステム 厚労省様式 様式3-7

 平成29年3月の、人口透析をしている方に係る医療費は、1,655,730円と高額であり、対象の方の医療費の削減が課題となっています。しかし、人工透析を実施している方は、糖尿病と高血圧の重なりがあるため、健康課題の解決という面でも両方の疾患に対して治療することが必要です。(表8)

5. 健康課題のまとめ

 当国保組合の特定健診受診率の課題として、男性の40代前半、男性の60~64歳、女性の65~69歳へのアプローチが挙げられます。

 男性の40代前半は、健康にたいする自覚がありますが、多忙であり受診をしていない状況が考えられ、生活習慣病の早期発見や重症化予防をするためには、年1回の特定健康診査を受け、身体状況をチェックすることの意義を個別に通知する等の対策が必要です。

  また、男性の60~64歳、女性の65~69歳については、医療機関で何らかの治療や内服が始まり、「特定健診は必要ない」と感じている可能性があります。しかしながら、治療中の方でも特定健診の対象となりますので、定期健診に特定健診の項目を含ませることを周知する必要があります。

6. 目的・目標の設定

事業名 目標 対象者 計画(P) 実施(D) 評価(C) 改善(A)
(1)特定健診事業 平成35年度までに受診率70%を達成 40歳以上74歳以下の被保険者 受診率の向上 (1)年に一度、事業案内を送付
(2)窓口金0円で特定健診を受診できる事業の実施
(3)人間ドック受診者へ45,000円の補助
平成35年度までに受診率70%を目指す  
(2)特定保健指導 平成35年度までに受診率30%を達成 特定保健指導該当者 受診率の向上 (1)年に一度、事業案内を送付
(2)特定健診受診当日に初回面接を行えるようにする
平成35年度までに受診率30%を目指す  
(3)インフルエンザ予防接種補助 平成35年度までに実施人数1,500人を達成 全被保険者 インフルエンザ予防接種人数の増加 (1)年に一度、事業案内を送付
(2)1人につき、上限2,000円補助
平成35年度までに実施人数1,500人達成を目指す  

7. 保健事業実施計画(データヘルス計画)の評価方法の設定

 評価については、国保データベース(KDB)システムの情報を活用し、毎年度の短期目標の評価、平成32年度の中間評価を行い、事業の見直しをすることとします。また、データについては、経年変化、県、国との比較を行い評価します。

8. 保健事業実施計画(データヘルス計画)の見直し

 計画の見直しは、最終年度となる平成35年度に、計画に掲げた目的・目標の達成状況の評価を行います。

 国保データベース(KDB)システムに毎月健診・医療のデータが収載されるので、受診率・受療率、医療の動向等は定期的に行います。

 た、特定健診の国への実績報告後のデータを用いて、経年比較を行うとともに、個々の健診結果の改善度を評価します。毎年の進行状況や評価結果に応じて計画を見直す必要があるため、PDCAサイクルのプロセスで進行状況を把握し、事業の修正を行うこととします。

 なお、必要に応じて茨城県国民健康保険団体連合会の保健事業支援・評価委員会の支援を受けることとします。

健康課題の分析、保健事業の企画

9. 保健事業実施計画(データヘルス計画)の見直し

 本計画は、ホームページに概要を掲載して、茨城県医師会会員に公表します。

10. 個人情報の保護

 個人情報の取扱いは、茨城県医師国民健康保険組合個人情報保護に関する規程にしたがいます。

11. その他計画策定に当たっての留意事項

 データ分析に基づく保険者の特性を踏まえた計画を策定するため、国保連合会が行うデータヘルスに関する研修に事業運営にかかわる担当者が積極的に参加するものとします。